ARTES インフォ*クリップ[vol.84]アルテス十大ニュース&ベスト・オブ2016!号

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ARTES インフォ*クリップ[vol.84]2017/1/2
アルテス十大ニュース&ベスト・オブ2016!号
アルテスパブリッシング
http://artespublishing.com
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新年明けましておめでとうございます。
2017年4月5日、アルテスパブリッシングは
創業10周年を迎えます。
“音楽を愛する人のための出版社”を
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

新春第1号のメルマガは、昨年を振り返って
「アルテスパブリッシング十大ニュース」と
スタッフによる「ベスト・オブ2016」をお届けします。
まず十大ニュースからどうぞ!

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■ アルテスパブリッシング十大ニュース
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[1]年間の刊行点数が19点と、過去最高を記録。重版は16タイ
トル(20回)。今年は刊行点数を減らすことが目標です。

[2]初の小説、髙橋健太郎著『ヘッドフォン・ガール』をリリー
ス。大森望さん、鏡明さんといったエキスパートたちに高く評価さ
れる(1月)。

[3]「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016」のオフィシャ
ル・ブック『ナチュール』を翻訳出版(4月)。

[4]「おかげさまで創業10年目に突入フェア」を全国13の書店/
楽器店で開催していただく(4月ー)。

[5]『クレオール・ニッポン』に続くCDブック第2弾として、ネ
ーモー・コンチェルタートが谷川俊太郎の詩を歌った『おとなのため
の俊太郎』を発売(6月)。

[6]内田樹著『困難な結婚』が2万部に到達。会社始まって以来の
ベスト=ロングセラーに(7月)。

[7]古楽をテーマにした新シリーズ、Books〈ウト〉を創刊。第1
弾は渡邊温子著『古楽でめぐるヨーロッパの古都』(7月)。

[8]松田美緒のCDブック『クレオール・ニッポン』(2014)の
ドキュメンタリー番組『ニッポンのうた “歌う旅人”松田美緒とたど
る日本の記憶』が日本テレビ系列NNNドキュメント’16で全国放送さ
れ、大反響を呼ぶ(10月)。

[9]初めて税務署の調査が入る(10/11月)。調査官がとても有
能な方で、鋭くミスを突かれましたが、大過なく終了。

[10]11月から新たに沼倉康介がスタッフに加わる。会社始まって
以来の新卒。

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■ ベスト・オブ2016
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【沼倉康介】
昨年からアルテスに加わりました沼倉です。よろしくおねがいしま
す。どんなものでもベストを選んでよいと言われたのでたくさん選
んでみました。

◎本
フアン・ガブリエル・バスケス著、柳原隆敦訳『物が落ちる音』松籟社
73年生まれの比較的若い書き手。すぐれた物語である以上に、非当
事者が自ら歴史を調査をして一人称でそれを語るという構造が主題
ではなかろうかと思います。生まれる前の負の遺産をどうやって背
負い込まずに、見つめればよいのか、最近の文学の意識はこのあた
りにあるのでしょうか(『hhhh』しかり)。ラテン・アメリカの新
しい世代はここ数年邦訳がたくさん出ていて嬉しいです。

青山拓央著『時間と自由意志:自由は存在するか』筑摩書房
かなりの意欲作。自由意志と決定論について「そもそも決断の分岐
を点と線の接続でイメージするのはおかしいのでは」という問いか
らはじめるわけなのですが、ここでもうやられてしまいました。ど
ういう知性があればこの問いを発することができるのだろう…。

◎漫画
桜玉吉『日々我人間』文藝春秋
『週刊文春』三年分の連載がついに単行本化。玉吉先生はもう、と
にかく、ずっと描いていてくれれば、それでいいです!

衿沢世依子『うちのクラスの女子がヤバい』講談社マガジンエッジ
萌えないけどかわいい。距離感も、考え方も、台詞も素晴らしく普
通。普通のことを普通に描く天才が、センス・オブ・ワンダーの普
通さも普通に描いてます。人間って基本的にはなにをしていてもか
わいらしい生き物なのかもしれません。

◎CD
角田俊也『ソマシキ場』
おそらく5年以上続けていたライフワークの一区切り。録ること、
聴くこと、思うこと、思い出すこと、忘れること、など。言葉が思
いつかないので以上です。

◎ライヴ
パンチ・ブラザーズ@ブルーノート東京
まさかマイク一本でやるとは。ブルーグラスがいなたいなどと誰が
言ったのか! 超スタイリッシュ! 年明けに出るクリス・シーリ
ーとブラッド・メルドーとのアルバムが楽しみ!

かえる目@吉祥寺キチム
『切符』のレコ発。「三人姉妹」にうたわれる機械のせつなさはゼラ
ズニイを超えたと思いました(0か1かをあんな詩的に表現できるなん
て!)。爆笑ソング「ボブ・ディランのうた」の音源化を切に願って
おります。

◎おかし
ヒグマ・ドーナッツ@学芸大学
7月ころいつの間にか開店していたのでフラッと寄って食べてみたら大
当たり! かなり軽めでふんわり系。小麦のうまみが生かされていて、
目白かいじゅう屋丸パンの世界を感じましたね…。

◎自転車ロードレース
パリ=ルーベ
カンチェ、ボーネン、サガンを差し置いて優勝したのはまさかの37歳
超無名ベテラン、マシュー・ヘイマン。実況も「ヘイマン? ハイマ
ン?」と発音がブレまくる無名っぷり。ネタ的にも展開的にも後世に
語り継がれる名レースでしょう。その後ヘイマンはツール最終日に
「シャンゼリゼは石畳だから僕も勝てるかもね」とか言い出してました。

【木村元(代表取締役)】
◎本
アン・ウォームズリー(著)向井和美(訳)『プリズン・ブック・
クラブ──コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』(紀伊國屋書店)
ぼくはつねづね本というものをリベラリズムの象徴だと思っている
のだが、まさにそのことを代弁してくれるような本だった。「読書
の楽しみの半分は、ひとりですること、つまり本を読むことよ。あ
との半分は、みんなで集まって話し合うこと」(登場人物のひとり
キャロルの言葉)。リベラルというのは、「みんな」でできた社会
を受け入れることでもあるけれども、それぞれが「ひとり」である
ことを認めることでもある。いや、そんな七面倒くさいことを言わ
なくても、読む人すべてに本の可能性、素晴らしさを感じさせてく
れる1冊です。

◎CD
御喜美江(アコーディオン)『アコーディオン・バッハ』(ナクソ
ス)
1996年の録音の20年ぶりの復刻だそう。「風の楽器」アコーディオ
ンならではの涼やかさと風通しのよさで、リアルな物質性を捨象し
たバッハ音楽の本質にせまる。

◎ライヴ/コンサート
2016年11月7日(月)サントリーホール
山田和樹(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団
柴田南雄生誕100年・没後20年記念演奏会
山田和樹が次代につなぐ~ゆく河の流れは絶えずして
(合唱:東京混声合唱団、武蔵野音楽大学/尺八:関 一郎)
柴田南雄という人がいかにすごい作曲家だったかをダイジェストで
聴かせてくれるような演奏会だったが、演奏会前からの指揮者・山
田和樹さんの「販促活動」のすごさに舌を巻いた。「ひらめき」で
演奏会を企画し、みずから実行委員長となり(演奏会のコストも自
腹)、Facebookページを立ち上げ、数多くの取材を受け、ついには
チケット完売!(どうせ当日券で入れると思っていた業界人連中が
何人も涙をのんだという) 当日のプレトークも聞き手を立てずひ
とりでこなし、文化庁芸術祭大賞受賞のおまけ付きという「豪腕」
ぶり。演奏そのものも素晴らしかったけれども、コンサートとか指
揮者のあり方、メディアの使い方なんかすべてを根本から考え直さ
せてくれた。とはいっても、これって柴田南雄が40年前からやって
いたことなんだよね。

◎舞台
2016年12月7日(水)三越劇場
劇団民藝「SOETSU─韓(から)くにの白き太陽─」
作=長田育恵 演出=丹野郁弓
これについては、Facebookに感想を書いたので、そちらをお読みく
ださい。

◎iPhoneアプリ
Spark(メールアプリ)
数年前から使っているんだけど、今年に入って「やっぱ使いやすい
!」と再認識。左右のスワイプでアーカイブ/削除/スヌーズなど
使い分けられるのでタスクシューティングに最適だし、なによりも
素晴らしいのはDropboxとの連携機能。ファイルを添付するかリン
クをペーストするかを選べるのはこのアプリだけでは? 難を言え
ば検索機能がいまいちなので、検索用には「Gmail」を使ってます。

【鈴木茂(代表取締役)】
◎CD
ストリーミング・サービスが本格的に始まって、試聴はあれこれでき
るようになったものの(CDを自宅で聴かないと聴いた気がしない)、
もっともっとたくさんちゃんと聴かなきゃ、とかえって欲求不満が募
らないでもない1年のベスト・テンを選んでみました(順不同)。
John John Festival待望の新作は、アイルランドの伝統音楽をベース
にした日本の音楽がここまで来たか!と小躍りしたくなるほどのすば
らしさ。もっともっと広く聴かれてほしい。今年はO’Jizoやhatao &
namiのニュー・アルバムも控えていて、日本のアイリッシュ・シーン
はますます楽しみです。

John John Festival『Forget me not』
V.A.『ソウル・フラワー・ユニオン&ニューエスト・モデル2016トリビュート』
大森靖子『Tokyo Black Hole』
デヴィッド・ボウイ『★』
宇多田ヒカル『Fantome』
キリンジ『ネオ』
Wilco『Schmilco』
Anderson .Paak『MALIBU』
Common『Black America Again』
Camila Meza『Traces』

◎本
柴田靖子 著『ビバ!インクルージョン 私が療育・特別支援教育の
伝道師にならなかったワケ』(現代書館)
 水頭症という症状をもつ二人のお子さんの母親が、娘さんが6歳
の時から義務教育を終えるまでの10年間を綴った本。「障害」児を
「普通」学級から排除して「特別」扱いすることしか考えない日本
の学校教育と直面しながら、できあいの理屈に寄りかからず、自ら
の頭とからだで考え行動してきた柴田さん(と山下さんのご夫妻)
に、とても感銘を受けた。自分の子どもとの付き合い方も考えさせ
られる。必ずしも文章はこなれていないし、もっと説明が欲しいと
ころもあるけど、それが逆にリアル。障害のあるなしにかかわらず、
子どもと暮らす人たちにはぜひ読んで欲しい。

音楽関係では『誰が音楽をタダにしたのか?』(早川書房)かな。
「自分の手で出したかった!」と悔しくなるほど面白かった。

◎ライヴ/コンサート
優河 with おおはた雄一、坂田学、伊賀航、細海魚(7月7日・渋谷duo MUSIC EXCHANGE)
2015年下北沢以来、2度目のライヴ。メンバーが素晴らしいのでか
なり期待していったら、それを遥かに上回るスケールのどでかい歌が
聴けてたまげました。これからどれほどとんでもない歌い手になって
いくのか、空恐ろしいです。2月5日に同じメンバーでのライヴがあ
るのに、ヤマンドゥ・コスタと重なって行けないのが残念すぎる。

山村若静紀・村澤丈児(第5回静月会、10月25日・橋楽亭)
大阪での内田樹さんのトークショーにいらして下さったご縁でお誘い
いただき、予備知識のかけらもないまま生まれて初めて体験した日本
舞踊の美しさは衝撃的でした。知らないというのは恐ろしいことです
ね。またぜひ体験したいです!

ほか特によかったのは、ジム・オルーク、シャソール、カエターノ・
ヴェローゾ、ヴェーセン、ルナサ、フルック、Gotch & The Good
New Times、サニー・ランドレス、ジョー・バターン、蓮沼執太、
hatao & nami、シャロン・シャノン、John John Festival。

◎映画
『この世界の片隅に』片渕須直監督
始まったとたんにウルッとして「これはまずい」と思ったんですよ。
なにげない日常がひたすら愛おしく愛おしくて、全編とにかくありえ
ないぐらい号泣。とくに後半は嗚咽をこらえるのに必死で、こんな映
画初めてでした。作画もアニメーションも声も音楽も音も、すべてが
すばらしい。また観に行きます。

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