ものを作り続ける「ある若きウィーン人」が顔をのぞかせる──『週刊読書人』に『シェーンベルクと若きウィーン』の書評掲載

『週刊読書人』2025年2月14日号にテレーゼ・ムクセネーダー著/阿久津三香子訳/樋口隆一日本語版監修『シェーンベルクと若きウィーン』の書評が掲載されました。評者は慶應義塾大学准教授の白井史人さんです。

「多面体のような作曲家の形成過程を追う──鮮明に浮かび上がる世紀転換期の文化と若き日々」と題して、本書の内容をていねいに紹介しながら、以下のように共感をもって評してくださいました。

[略]網の目のように張り巡らされたシェーンベルクの人脈と思想的連関を紐解いている。各章末には、シェーンベルク自身や周囲の人物による文章が挟まれる。絵画や舞台作品を含めたシェーンベルク自身の活動を扱う第九章と合わせて、この作曲家がいかに都市ウィーンを経験し、ウィーンがいかにシェーンベルクを受け止めたのか(あるいは受け止めきれなかったのか?)、さまざまな角度から鮮明に浮かび上がる仕掛けだ。

シェーンベルク研究者の阿久津による丹念な翻訳は、この作曲家の若き日々を生き生きとよみがえらせる大きな助けとなっている。

本書を手にすれば、多面体のような作曲家・シェーンベルクの多彩な活動の奥に、ものを作り続ける「ある若きウィーン人」が、つねに顔をのぞかせていることに気づくだろう。