脳内のあらゆる部位を刺激されながら著者と旅する感覚|『音楽学』に『シューベルトの「冬の旅」』の書評掲載

日本音楽学会の機関誌『音楽学』第63巻1号に、イアン・ボストリッジ著/岡本時子+岡本順治訳『シューベルトの「冬の旅」』の書評が掲載されました。評者は弊社からヒンリヒセン著『フランツ・シューベルト──あるリアリストの音楽的肖像』を翻訳出版した音楽学者の堀朋平さん。

[本書に掲載された雪の結晶のカラー写真をめぐって]こうして物理的イメージと観念的テキストは補い合い、往時の旅人に現象したはずの風景に読者も引き込まれてゆく。脳内のあらゆる部位を刺激されながら著者と旅する感覚が、本書の快である。

……ボストリッジが本書の主人公であるとすれば、これら無限の問いを引き受け、未来に答えを返すべき他者の位置に、われわれ読者が来るのである。

英語版の原書への書評という体裁をとってはいますが、日本語版についても「元の文章を解きほぐし丁寧に言葉を補うことで、当代最高の歌手による生きた音楽論を流暢な日本語にしてくれた訳者に敬意を表したい」と評してくださっています。[G]