14回目の創業記念日にコロナ禍の1年を振り返る

今日はアルテスパブリッシングの創業記念日。丸14年が経って第15
期目に入ります。14という数字はアニヴァーサリー・イヤーとしては
中途半端ですが、コロナ禍にあった第14期はやはり特別な、たいへん
な1年でした。

新学期の教科書として採用される本の注文がひと段落し、第13期の
決算を準備し始めた2020年3月までは、「とても」と強調したいく
らい業績は順調。会社としての体勢もだいぶ整ってきて、「これで
来期はあまりお金のことを気にかけずに仕事に集中できそうだ」と
胸を弾ませていたのです。

ところが、翌4月に緊急事態宣言を受けて多くの書店が閉店。新刊
を控えた出版社もあるなかで、思い切って予定どおり4月15日に発
売した『約束の地、アンダルシア』は、日本の誇るイスパニスタ
(スペイン文化研究家)濱田滋郎さんのひさしぶりの単著、しかも
カラーページ豊富な力作にもかかわらず、読者に届けられていない
隔靴掻痒感! 出会いの場としての書店の大切さを痛感しました。
そして4月の売上はなんと前年同月比30%! 19年4月の売上は、
東京藝大教授陣による『楽典』が話題を呼び、『YMOのONGAKU』
がすごい勢いで売れていたおかげでひときわ良かったということも
あるのですが、初めて作ったTシャツや『ポップ・ミュージックを
語る10の視点』の思いがけない教科書採用などもあったのに7割ダ
ウンとは……。こんな数字が何カ月も続いたらやっていけない……
と正直蒼くなりました。

5月に入って書店が営業を再開し始め、感染が落ち着くにつれて、売
上は少しずつ回復していきます。持続化給付金もぶじ受けとり、コ
ロナ特別融資も提示された枠を目いっぱい申し込みました。感染状
況の見通しが立たなくても、とにかく出版社としてやれること、やる
べきことを続けていくほかありません。

機関誌『フィルハーモニー』の編集・制作とホームページのお手伝
いをしているNHK交響楽団をはじめ、オーケストラは演奏会を開け
なくなってしまいましたし、多くのアーティストたちとライヴハウ
ス、劇場、映画館等々が苦境に追い込まれているのは皆さんよくご
存じのとおり。そうした文化芸術関係のなかでは、出版業界のダメ
ージは小さいほうでしたから、苦しいなんて泣き言は言ってられな
い。そんな気持ちも強く持っていました。

結果的に1年を通しての売上も小さくないダウンとなる見込みですが、
さいわい収支のバランスを保ったまま健全な決算を出すことができ
そうです。大きなヒット作がないなかでの結果ですので、それなり
に会社としての地力がついてきたということなのかもしれません。

自宅での仕事が増え=通勤が減り、打ち合わせなどで人と会うこと
もライヴやイヴェントに行くこともなくなったおかげで、生活も精
神状態もずいぶん変わりましたが、仕事のうえでプラスになったこ
とのひとつに、原稿に取り組む時間が増えたことがあります。『メ
シアンの教室』と『熱帯の真実』という翻訳の大著を刊行できたの
はそのおかげのようなものですし、編集をおもに担当している木村
と鈴木が両手にあり余るほど抱えている(ために遅々として進まず、
お待たせしてお詫びばかりしている)企画がずいぶん前進したのは
確かです(事情は同じという著訳者の方も少なくなく、いきなりド
サッと原稿が届いてこちらが慌てるなんていうことも)。そこだけ
に限っていえば、出版社としての本分に集中できてよかったと言え
るでしょう。

昨期アルテスが発行・発売した新刊は、一昨期から少し減って16点
でしたが(増刷した既刊は14タイトル)、そういうわけで今期はま
た増えることになりそうです。いくつかの大型(当社比)企画に加
えて、初めて手がけることになる翻訳小説なども準備中で、刊行予
定リストを見ながらワクワクしています。

創業記念日という特別なタイミングですし、コロナ禍での小出版社
の実状を知っていただこうとも思い、この1年のことをすこし書いて
みました。最後にあらためてお願いしたいのは、アルテスの出版活
動を支えてくださる会員=「フレンズ(無料)」&「サポーター
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とです。限定メルマガや新刊プレゼントなど、ご用意しているさま
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ぞよろしくお願い申しあげます。

         アルテスパブリッシング代表 鈴木 茂・木村 元