『週刊朝日』で陣野俊史さんが『線の音楽』を書評

線の音楽

本日発売の『週刊朝日』10月3日号に近藤譲著『線の音楽』の書評が掲載されました。評者は文芸評論家の陣野俊史さん。「音が「構造化」されたとき音楽が生まれる」と題して、本書の旧版にあたる「エピステーメー叢書」の思い出から書き起こし、近藤さんの音をめぐる思考を、じっさいに音楽を聴いて跡づけながら、ていねいに紹介してくださっています。

……復刊されたこの本を読み返してみて、とにかく著者の姿勢にうたれた。一九七〇年代に音楽を作曲しようとする際に、どこまでが音楽なのか、著者の言葉を使えば、どれが「楽音」でどれが「楽音」ではないのか、著者は思考を厳密に深めていく。

……一つひとつの語彙を吟味し、定義づけ、一歩ずつ進んでいく近藤の姿勢は、『線の音楽』という曲を作りながらの音楽的実践から生まれている。ここが凄いところだ。理論だけではない凄味がある。

「関係」や「構造」の重要性を、私はこの本で学んだ。「音」を「言葉」に置き換えてもいい。言葉はあらかじめ言葉として存在するのではない。関係づけられ、構造化されることで、言葉になる。音と音楽の関係も同じ。こんな当たり前のことを、近藤は自前の言葉で存分に語っている。

ぜんぶ書き写したいくらいの心のこもった書評です。陣野さん、ありがとうございました。

[木村]