『サウンド&レコーディング・マガジン』で『バレンボイム音楽論』紹介

バレンボイム音楽論

『サウンド&レコーディング・マガジン』10月号にダニエル・バレンボイム著『バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ』(蓑田洋子訳)の書評が掲載されました。評者はもちろん、同誌の「Books」コーナーを長年担当されているミュージシャンの横川理彦さん。いくつか引用させていただきます。

ワイマール、シカゴとワークショップを重ねたこの楽団[故エドワード・サイードとバレンボイムがイスラエルとアラブ諸国の若手音楽家を集めて結成したウェスト=イースタン・ディヴァイン・オーケストラ]が、かつてユダヤ人とアラブ人の共通の歴史があったアンダルシアに受け入れられる過程は感動的だ。

「音と思考」「聴くことと聞くこと」「思考の自由と演奏および解釈」「フィナーレ」と題された4つの文章は、音楽から哲学や政治につながっていく比較的抽象度の高い論考で、正統クラシックのただ中で活躍してきた著者ならではの思考が展開されていく。

……バッハ、モーツァルト、ブーレーズ、サイードなどに関する短い文章も、新鮮な発見に満ちていて面白い。クラシック音楽ファン以外にも薦めたい一冊だ。

このコーナー、毎回「お題」があって、それにひっかかってくる音楽書を新旧問わずとりあげるという横川さんならではの「文脈」が設定されているのが面白いです。今回の「お題」は「音楽の成り立つ場所と可能性を考える3冊」。選ばれたのはほかに浜田淳編『音楽の本の本』(カンゼン。ちなみにこの本にはアルテス木村も数本寄稿してます)、本條秀太郎著『本條秀太郎、三味線語り』(淡交社)の2冊。
それにしても、『バレンボイム音楽論』は2008年11月に刊行したもの。つい数年前の本ですが、「新刊」だけをとりあげるふつうの媒体では話題になることすらありません。こうした「旧刊」もふくめたレヴューの場があることに感謝したいと思います。

[木村]