ジャン=ミシェル・モルク(著)、藤本優子(訳)『偉大なるヴァイオリニストたち──クライスラーからクレーメルへの系譜』(ヤマハミュージックメディア)
クライスラー、ブッシュ、エルマン、シゲティをはじめとする歴史的ヴァイオリニスト50人が紹介された本なのですが、なんといってもCD-ROMに収録された音源がものすごい。登場する50人すべての演奏が全65曲、計8時間弱収録されています(目次に記載された「CD-ROMドライブで再生してください」という注意書きに「ん? なんで?」と思いましたが、これはたしかに聴けないわね)。
書籍としてつくられているので、書店(あるいは楽器店)で買うものですが、その内実はむしろCD(それもコンピュータで聴くことを前提とした)。なんとなく時代の流れを感じるつくりの商品ではあります。
CDだったら「ライナーノーツ」にあたるところの書籍。ひとりひとりのヴァイオリニストに充てられたページは短いですが、藤本優子さんのすっきりと読みやすい翻訳がうれしい(『マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法』の翻訳もすばらしかった!)。
たとえば「訳者あとがき」がないとか、CD-ROMの収録時間がどこにも記載されてないとか(版元がつくったプレスリリースには書いてある)、なんとなく不親切さを感じさせる本ではありますが、好事家は1冊持っておいてもよろしいんじゃないでしょうか?
2012年07月09日