水村美苗さん(作家)推薦!
「問われるべきだったのに、問われなかった問い。それを問うのが学問のすべてである」
小澤征爾、内田光子、竹澤恭子、ヨー・ヨー・マ、チョン・キョンファ、ラン・ラン、ユンディ・リー、サラ・チャン──
西洋クラシック音楽の世界でアジア人が活躍しているのはなぜか? 音楽は本当に人種や国や文化の境界を超えるのか?
70名におよぶアジア系音楽家の証言をもとに、歴史・文化・民族誌の見地から、クラシック音楽ひいては芸術の本質にせまる!
本書は2010年に『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール』(弊社刊)でアメリカの一地方都市の市民ボランティアが育む音楽コンクールの実態を活写したアメリカ文化研究者、吉原真里さんによる新著。2008年にテンプル大学出版局から刊行されたMusicians from a Different Shore: Asians and Asian Americans in Classical Musicを、著者自身が翻訳したものです。
現在の西洋クラシック音楽界(とくにアメリカの)におけるアジア人およびアジア系の音楽家の躍進は目覚ましいものがあります。西洋の教養文化の最たるものとされているクラシック音楽の世界で、アジア人がここまで活躍するようになったのはなぜか──。70人におよぶアジア系音楽家の証言をもとに、歴史・文化・民族誌の見地から、クラシック音楽ひいては芸術の本質にせまります!
「西洋に憧れているなどとも思わず、アップライト・ピアノに向かっていた数百万人の日本の女の子たち。
少し遅れて同じことをしていた韓国の子供たち。中国の子供たち。さらにはアメリカ生まれのアジア系の子供たち。我々はなぜかくも熱心に西洋音楽を習ったのか。
問われるべきだったのに、問われなかった問い。それを問うのが学問のすべてである。その問いを問えば、
学問を通じて自分を知るのにもつながる。」──水村美苗(作家)
プロフィール
吉原真里(よしはら・まり)
1968年ニューヨーク生まれ。東京大学教養学部卒、米国ブラウン大学博士号取得。ハワイ大学アメリカ研究学部教授。専門はアメリカ文化史、アメリカ=アジア関係史、ジェンダー研究など。著書に『アメリカの大学院で成功する方法』『ドット・コム・ラヴァーズ──ネットで出会うアメリカの女と男』(以上中公新書)、『性愛英語の基礎知識』(新潮新書)、『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・ コンクール──市民が育む芸術イヴェント』『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?──人種・ジェンダー・文化資本』(以上アルテスパブリッシング)、共編著に『現代アメリカのキーワード』(中公新書)、共著に『私たちが声を上げるとき──アメリカを変えた10の問い』(共著、集英社新書)、そのほか英文著書多数。
著者ウェブサイト:Mari Yoshihara Official Web Site | 吉原真里ウェブサイト
CONTENTS
はじめに
序
1 「アジア人」とクラシック音楽
太平洋を越える西洋音楽
西洋音楽、東アジアに到来
蝶々夫人・日本版
中産階級のためのクラシック音楽、そしてアジアから西洋への「逆輸出」
スズキ・メソードのグローバリゼーション
結び
◆音楽家たちの声
1 デイヴィッド・キム
2 リフェン・アンソニー
3 高橋利夫
4 竹澤恭子
2 「アジア人音楽家」という「人種」
アメリカのアジア人音楽家たちの「ルーツ」と「ルート」
留学生
「音楽移民」
「移住するプロ音楽家」
「越境子女」
「混合」アジア人
音楽と「差異」
音楽と民族/国家アイデンティティ
結び
3 クラシック音楽における性力学
ジェンダー規範の逸脱──男性音楽家たち
音楽界の性力学との葛藤──女性音楽家たち
アジア人音楽家のビジュアル・マーケティング
音楽とセクシュアリティ──ゲイの音楽家たち
結び
4 階層としての音楽家、文化資本としてのクラシック音楽
階層理論と職業としての音楽
音楽家の出身階層
クラシックのコスト
クラシック音楽家の経済生活
文化的生産「フィールド」と階層
結び
◆音楽家たちの声
5 マーガレット・レン・タン
6 チョーリャン・リン
7 名倉誠人
8 ケンジ・バンチ
5 自分たちの声を求めて
クラシック音楽の「インサイダー」と「アウトサイダー」
自分自身の声 その一──器楽家の場合
自分自身の声 その二──オペラ歌手の場合
自分自身の声 その三──作曲家の場合
結び
おわりに──クラシック音楽という「経験」
あとがき
参考文献
索引